カテゴリ:大学問題( 182 )
2009年 08月 11日
学生の授業評価コメント
耐震工事のための引越しがあるので居室の片付けをしていたら,前任校で最後にやった授業の「学生評価結果」が出て来ました.わざわざ郵送してくれていたものです.実は最近は授業のスライド作成に凝っているのですが,この当時はまだ「普通」のスライドでやっていました.40人弱の授業でしたが,学生の背景のスペクトルは広く,どのあたりをターゲットに授業するかを毎年悩んでいた授業でした.学生の側のコメントにもそれが出ているようです. 途中で2度版が変りましたが同じ教科書で7年やったかと思います.板書からパワーポイントに移行したのは4年目からで,移行した最初の年は,かなりはりきって,教科書の内容に最新の論文からの情報も加えてスライドを作って「その後」の話をしたら「教科書に書いてない」と非常に不評でした.次の年からは教科書からはずれないようにし,毎年「速すぎる」と書かれていたので年々使用するスライドを削除してゆっくり説明するようにしていって,この年が最後です.スライドの枚数では,初年度の2/3くらいになっているかと思います.でもまだ「速かった」んですねえ.「教科書」が指定されている授業だったので,次回どこをやるかははっきりしていたのですが,予習を前提に授業を計画してはダメだということが良く分ります.

田中 一著「さよなら古い講義」を参考にして,毎回の課題に「授業の内容の質問」を書かそうとしていた試みは,この年は学生に不評だったようです.この年から全授業にTAが付いたのでこの年はTAが回答を作成したこともあり,趣旨が徹底しなかったのかも知れません.以下が学生の自由記述のコメントです.


  • パワーポイントの授業の中でも特に分りにくいと感じた.もっと分りやすいストーリーのある授業になる内容だと思う.課題を解くにも,授業の話では分りにくかった.課題の"授業についての質問を書け"はやめて欲しいと強く思う.(「何も疑問が浮ばない」という学生を「質問書」に向かせるところまでは徹底できていなかったようです.)
  • スライドの内容は分りやすく,予習・復習はしやすいと思う.只,説明の仕方がわかりずらいことが多々あった.後,レポートの解答の説明が少しあっさりしすぎな感もあった.
  • より細かな内容は黒板に書いてくれれば,もっと分りやすかったと思います.パワーポイントはとても見やすかったので良いと思います.
  • (質問書で)授業中に習った内容の「質問」は禁止されていましたが,一度聞いても理解しきらない点もあるので,習った部分の質問も認めて欲しかったです.(これは,「私が話したことをそのままもう一度訊くな」という意味が分ってもらえていなかったようです.)
  • 早口で聞き取りづらかった.授業の内容はとても面白くて興味深い.
  • 毎週出されるレポートの最後の問題(授業内容についての「質問」を書け)が生徒・TA共に評判が悪いにもかかわらず,続けたのは正直良いとは思えなかった.(「生徒」ではないと思いますが,学生は「何を書いていいか分らない」.前年までは私が全部に回答して返却していたのですが,この年から全授業にTAが付いたのです.「回答をきちんとするのが大変」と,TAにも不評でした.)
  • "コレは知っていて当然だ"という感じの授業で,ついていくことは困難でした.(そんなに教科書から脱線はしなかったと思うのですが,教科書が指定されている授業なので,教科書の記述のそのままの説明というよりは,スライドを見せながら背景や意味を話すようにしていたのが失敗のようです.)
  • この授業は一番難しいと思っています.(こちらとしては,「教科書」が指定されている授業でしたので「少しは予習しろ」と思っていたのも事実ですし,授業中に明らかに高校の範囲の質問をしてみて,「これは無理か」と思っていながら,そのまま進めてしまった部分も確かにあります.)


最近,今の大学で修士一年の授業の期末試験の採点をしたのですが,「専門」というよりは「常識」のレベルで"コレは知っていて当然だ"という意味では,かなりショックが大きかったです.来年も同じテーマで授業するならどうしたものか悩んでいます.

「知っている」かどうかもそうですが,記述式の答案に論理的な作文が出来ていない学生も多いのですが,それは修士過程で今更「リメディアル教育」すべき内容ではないですよねえ...

引越し荷造りからの逃避でした...
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by nobu_san | 2009-08-11 15:21 | 大学問題
2009年 07月 29日
グローバル30の「戦略」
出張の往復の飛行機の中で,中公文庫版の「失敗の本質」を読んでいました.

防衛大学校の教員らしく,前大戦を「大東亜戦争」と呼ぶ等,気に入らないところもありますが,内容は面白いです.

で,例によって,何でも「国立大学」の問題に結び付けるわけですが,例えば,日本軍の場合は「オペレーション(戦術・戦法)が戦略化している」とかの「失敗」原因の指摘は,短絡頭の私はすぐさま大学の状況の実態と同じだなと思ってしまう訳です.

例えばグローバル30など,「戦術」が「戦略」になってしまっている典型のように思われます.また,大戦の失敗同様,大本営(文科省)が,前線(大学)の戦術の詳細に干渉しているようなものではないでしょうか.「兵站」を無視して前線に実現不可能な作戦を強いるとか,意思決定に「情報」を重視せず,その場の「空気」に寄ってしまう体質とか,旧日本軍のかかえていた問題と大学の問題が完全に重なってしまうのでした...

JSPSのホームページに書かれているような「我が国の高等教育の国際競争力の強化及び留学生等に魅力的な水準の教育等を提供する」という建前が,どこでどういう議論を経て「英語教育」にすり変ってしまったのか,全く理解不能です.

旧日本軍同様の「情報」軽視という点では,いったい誰が日本の大学での「英語教育」を望んでいるのでしょう.真摯な情報分析がされたのか非常に疑問です.そもそも日本の戦略が不明です.もしも日本が将来のアジア圏での中核となることを目指すのなら,使用する言語は英語ではなく中国語なのかも知れません.またこうして呼び込む留学生の,将来のアジア地区での活躍を期待し,それによって日本の地位を保とうという「戦略」なのであれば,一般学生からは隔離された「英語コース」に外国人留学生を迎えて教育する意味が理解出来ません.日本の大学でわざわざ苦労してまで外国人留学生を日本人学生からは「隔離」教育して,将来のアジア地区を担う日本人抜きの優秀な留学生コミュニティ・ネットワークの形成を助けようということでしょうか.私には自ら日本の地盤沈下を計画しているようなものに思えます...
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by nobu_san | 2009-07-29 00:04 | 大学問題
2009年 06月 29日
もらえるだけありがたい論
組合の配布ビラによると,「交渉」で担当理事が「こんな時期にボーナスをもらえるだけありがたい」と話したとか.

確かに,この不況でボーナスが大幅に削減された企業の報道も多数みられる.それに比べれば,僅かな削減で済んでいる「凍結」は甘受せよということだろう.しかし,法人に移行した大学の教職員は,ボーナスの多寡そのものよりも「人勧準拠」のボーナス凍結には反対しなければいけない.

この国では,幼稚園,小学校から,およそ全ての公的教育機関では「政府の決めたことには黙って従う」ことを教えている.法人に移行させられ,人事院規則から労働法の枠組みに移された国立大学において,政府の圧力に労働法を無視して従う大学の決定に教職員が沈黙しているということは,例え法的に問題であっても政府の決めたことには黙って従う姿勢を示すことになる.もしも本当に政府の直接的な圧力は無く,大学が政府の意を汲んで自主的に「人勧準拠」をしているなら,なおさら良くない.

しかも「そうして浮かした余剰金は学内補正を組んで年度末までに使い切らなければ」になっている.経営上必要もないのにとりあえず目立たないように人勧に準拠しておこう,という事勿れ主義は,本来社会の批判者であるべき「大学」にとっては自殺行為ではないのか.

そういう意味では,組合の反対ビラが単に「給料問題」に終始していて,しかも「凍結の代償措置が無い」などとボケたことを書いているのには,ちょっと不満を感じる.


なぜ「代償措置」を強調するんだろうと疑問に思っていたのですが,さっき遅れて届いた「全大教」240号の一面にも記事がありますね.「人勧準拠」の枠組みそのものが誤っている(違う?)のに,それをさっさと受け入れて「代償措置」を勝ち取ったとするのはいかがなものか...
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by nobu_san | 2009-06-29 00:08 | 大学問題
2009年 06月 24日
ボーナス凍結で浮いたお金
企画財務委員会という所属部局の委員会の報告が来た.うちの大学で人勧準拠のボーナス凍結で浮くのは3.2億円らしい.もしも大学の財政が困窮しているなら少なくない額か.

しかし,問題は,執行部はそれだけ浮くので学内補正予算を組んで「何か」に使うと言っているらしいこと.寒冷地手当で争った北大の場合は,寒冷地手当て削減でどれだけ浮くのかという質問には「運営費交付金には色はついていない.大学全体で年度末にならないと収支がどうなっているかは分らない」というような説明に終始していたのに比べると,随分脇が甘い.これなら組合は争えば勝てる気がするが,どうするのだろう.

結局,国立大学を法人化した後,「経営」をしているのは(おそらく各専門分野での学問的業績は十分に高いが)素人の教員と文科省人事で異動する官僚の集団なので,現行労働法制下,やっていいこととダメなことが理解出来ていない(あるいは遵法が必要と感じない)んだろうなあ.まあ,我が国の場合,権力側に立つと法は勝手な解釈で運用しても良いというのは半ば常識のようでもあるので,大学とはいえそんなものか.

だいたい,そうでなくても他省庁の公務員の給与水準より低い国立大学の教職員のボーナスをも凍結して大学の予算を浮かせて,それを「何か」に無駄遣い(は言いすぎ?)せよ,というのが本当に国民の要請なのかな.この機会に「うちの大学はボーナスを予算通りちゃんと支給します.その代り,教育・研究に一層励んで下さい」とか言って宣伝する経営者感覚のある学長は一人くらい居ないのかしらん...
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by nobu_san | 2009-06-24 19:03 | 大学問題
2009年 06月 10日
生命科学分野における研究者の科学コミュニケーションに対する意識調査
科学者参加型コミュニケーション実践グループで実施した「生命科学分野における研究者の科学コミュニケーションに対する意識調査」のアンケート集計結果のホームページはここ
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by nobu_san | 2009-06-10 11:01 | 大学問題
2009年 05月 14日
留学生30万人計画と大学
たまたま昨日同僚と話をしたことがきっかけで,随分前に買ってから読まないで置いてあった「日本人をやめる方法」(杉本良夫)を通勤の地下鉄で読み始めた.

どういうきっかけで,どこで買ったのかも忘れたのだが,この本,「留学生30万人計画」を進めようとしている大学を観るのにも面白い.例えばこんなの.

自分は国際人だと思っていても,実際には「日本国の権益や日本企業の利益を海外で余り抵抗に会わずに拡張して行くこと」を国際化だと考えている,インターナショナリストという衣装をまとったナショナリストが意外に多いのではないか

法人になったとはいえ「国立」大学なのだから,大学の「国際化」の目的は,実は日本の国家利益の拡大であるとしても.そんなことには何も問題はない,ということだろうか...
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by nobu_san | 2009-05-14 23:16 | 大学問題
2009年 04月 22日
いつかと同じ対処方法
今日の所属学部の教授会で「留学生30万人計画」の状況説明があった.うちの大学で受け入れる留学生の目標数に論理的な根拠は全くなく,説明を聞いた私の理解では文科省というよりも,やはり財務当局との力関係の議論だったように思う.あまりに馬鹿馬鹿しくてちゃんとメモを取らなかったのだが,何年後かの受け入れ数の最低目標が,大学の規模とかには無関係に現在東大が受け入れている数だとか.「現状を越えない目標はあり得ない」とか,数値にしか拠ることの出来ない馬鹿な役人の論理でしかない.

担当副総長の説明は,簡単にまとめてしまうと,「我が大学で,数字だけの辻褄合わせのようなことをやるのではなく,ちゃんとした学生を育てるということを考えると,受け入れ留学生の数値目標の達成は到底無理.だが,やるしかない」というものだったと思われる.

この,みんながこんな計画は問題だと思いつつ,それでもなんとか対応するにはどうすれば良いかを議論している様子は,数年前に法人化を進めていた当時と全く同じだ.なぜそうしなければいけないのか,本当にやるべきことは何なのか,といった議論は飛び越えてしまい,設定された無理難題にどうやって取り組むかの方法論の議論になっている.ある学会の評議員会で法人化反対の決議声明をお願いした時,「法人化に向けて自分は大学では責任ある立場で法人化の対応を一所懸命やっている.そういう自分が居る評議員会でこういう声明をどうこうするようなことはあり得ない」と,ある先生にえらい剣幕で叱られたことを思い出した.その先生も既に定年で大学を去ってしまった.

教育機関であるはずの大学が,どういう人間を育てたい,そしてどういう社会にしたいとかではなく,対応しないと干されるとかいうネガティブな議論で大量の留学生を受け入れる.今日の説明では留学生はただの「数字」だったが,実際には一人一人が人間である.お荷物だが仕方無く受け入れられ,無理矢理なんとかしたシステムで教育されて,いったいどういうふうに育つのか.なぜ,全国立大学法人で一致団結して無謀な計画に「反対」しないのだろうか.財務当局も全ての国立大学を一斉に干してしまうなんてことが可能とは思えないのだが.

教授会ではこのあとの知財の輸出規制の説明で,留学生を装ったスパイの話が出て来た.偶然だろうが面白い.
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by nobu_san | 2009-04-22 23:31 | 大学問題
2009年 04月 22日
貧乏調査
所属部局のメールリストで,16日が締切のこんな「調査」が文科省から来ていた.

      記
平成22年の第2期中期目標期間を迎える時期にあたって、報道関係者より「財政的に苦労している大学の実情を取材したい」との要望が出てきており、各大学における「財政的に苦労している具体的な事例」(例:ジャム瓶をビーカー代わりに使用している 等)を収集したいと考えております。

【記載時の例示】
・動物病院における血清保存容器として、弁当で使用していた醤油入れに使っているプラスチック容器を活用。処方する消毒薬の容器として、ペットボトル等を洗浄して再利用
・研究室の実験台はゴミ捨て場から拾ってきた机や椅子を利用している
      など

2年前に「独立」して現在の大学にやって来たが,着任時にはもちろん研究室のスタートアップ費用は一銭もくれなかった.ほとんど何も無かったので学会等で知人に会う毎に「何かない?」を挨拶にし,学内の他研究室の不要な実験台や棚をもらったり,他機関や他大学の知り合いから中古の実験装置をもらい,当然のことながら上の例のように粗大ゴミ捨て場からテーブルや椅子を拾って来て使っているから,「事例」の提供は容易だ.

しかし,分野によるのかも知れないが,この調査は困窮度の調査と同時に「私は外部資金をふんだんに稼ぐ能力がありません」ということを示せ,といっているようなものではないか.私はもちろん稼げていないが,私の分野では文科省の大型プロジェクトが動いている.そもそも文科省としては,私が独立する前に動いていた一つ前の大型プロジェクトで「この分野の国内の研究基盤整備は終了した」という認識だ.今頃「何もない」研究室の実態を示すことなど,主宰者の能力不足を懺悔せよ,とでもいうのかな...
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by nobu_san | 2009-04-22 08:01 | 大学問題
2009年 02月 28日
京都大学時間雇用職員組合のストライキ
京都大学時間雇用職員組合が無期限のストライキをやっている.入試に合せて実行しているのはうまい.


ついでに,山井和則衆議院議員(民主党・京都6区)の国立大学の「雇い止め」に関する質問趣意書と,政府答弁書
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by nobu_san | 2009-02-28 22:45 | 大学問題
2009年 02月 16日
契約職員の「雇い止め」
最近の派遣切り報道に乗っかって,国立大学法人の契約職員の「雇い止め」も結構報道されていて面白い.

この問題は,実際のところは,法人化の際に公務員時代の日々雇用の定員外職員を,ろくに何も考えずに「ソフトランディング」と称して3年(その後5年になっている大学もあり)の契約更新期限を付けたものの期限が来ただけの話だ.雇用者である大学側の不幸は,「法人化」があったために個々の職員の更新期間がリセットされてしまい,まとまった人数が一度に「期限」になってしまったので非常に目立ってしまったことだろう.

しかし,「平時」なら,中國新聞で報じられている岡山大学のように,「業務は新たに雇用する非常勤職員が引き継ぐ」という感じで,各大学とも「規則」だとして何ごともなかったかのように「雇い止め」をしたのだろう.組合が契約職員の意味のない入れ替わりが大学の教育・研究活動の障害となっていることをさんざん主張しても気にもしなかっただろう.(この岡大の担当「官」も労働法の精神を全く理解しないし,この時期にKY(死語か)で結構面白いが.)

だが,たまたま急速な不景気による派遣切りと重なって,大学の意図と無関係に社会の注目を浴びることとなった.

鳥取大の人事課は「社会情勢をかんがみ、特別な取り扱いを検討中」らしいし,山梨日日新聞が報じている山梨大学のように,大学によっては「優秀な人でも勤務が3年間に限定され,組織の職務遂行能力が維持できない」などと積極的に見直し発言をしているところまであるのは非常に面白い.

さて,うちの大学はどうするのかな...
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by nobu_san | 2009-02-16 20:14 | 大学問題