2006年 03月 09日
中期目標・計画
小泉政権が進める国家公務員5%削減の「改革」に対して,法務,農林水産,国土交通、厚生労働の4省の2次回答の内容も事実上ゼロ回答であることが報じられているが,昨年の12月24日の公務員5%削減の閣議決定を受けて文科省に要請された国立大学法人は,さっさと中期目標・計画を修正している.

うちの大学の改訂「目標」には,人事の適正化に関する目標の中に,『「行政改革の重要方針」(平成17年12月24日閣議決定)において示された総人件費改革の実行計画を踏まえ,人件費削減の取り組みを行う』と具体的に書き込まれ,それを受けた「計画」では「運営費交付金を原資とする職員の給与等の人件費総額については,当該交付金の積算内容を勘案した適切な管理を行う」を削除し「総人件費改革の実行計画を踏まえ,平成21年度までに概ね4%の人件費の削減を図る」とした.つまり中期目標・計画期間に運営費交付金が特別に削減されなくても「4%」の人件費を削減するということを示すものと考えられる.

しかし,国会審議を経て成立している国立大学法人法では,文部科学大臣に対して,中期目標策定の際事前に大学法人の意見を聞くことを要請しており,その点がいわゆる独立行政法人と国立大学法人の違いの大きな部分であったと思う.つまり,

3 主務大臣は、中期目標を定め、又はこれを変更しようとするときは、あらかじめ、評価委員会の意見を聴かなければならない。

と,

3 文部科学大臣は、中期目標を定め、又はこれを変更しようとするときは、あらかじめ、国立大学法人等の意見を聴き、当該意見に配慮するとともに、評価委員会の意見を聴かなければならない。

の違いがあった.この違いは国会審議で何度も確認されているし,さらに衆参両院で以下のような附帯決議がされている.

衆議院附帯決議

4、 文部科学大臣は、中期目標の作成及び中期計画の認可に当たっては、大学の自主性・自律性を尊重する観点に立って適切に行うこと。

参議院附帯決議

5、中期目標の実際上の作成主体が法人であることにかんがみ、文部科学大臣が中期目標・中期計画の原案を変更した場合の理由及び国立大学法人評価委員会の意見の公表等を通じて、決定過程の透明性の確保を図るとともに、原案の変更は、財政上の理由など真にやむを得ない場合に限ること。

しかし,実際には独立行政法人と国立大学法人に何ら違いはない.我々が争っている給与についても,公務員型の特定独立行政法人と,非公務員の国立大学法人が通則法57条と63条に書き分けられていても,実際には何も変わらない.どうやら「法」とはそのように「解釈」すれば良いものらしいし,そもそもこの国では行政機関である閣議の決定が「法」に優先する.先の閣議決定には,

ウ その他の公的部門の見直し
① 独立行政法人及び国立大学法人法に基づく法人
(ア) 主務大臣は、国家公務員の定員の純減目標(今後5年間で5%以上の純減)及び給与構造改革を踏まえ、独立行政法人及び国立大学法人法に基づく法人について、各法人ごとに、国家公務員に準じた人件費削減の取組を行うことを中期目標において示すこととする。
(イ) 各法人は、中期目標に従い、今後5年間で5%以上の人件費(注)の削減を行うことを基本とする(日本司法支援センター及び沖縄科学技術研究基盤整備機構を除く。)。これに加え、役職員の給与に関し、国家公務員の給与構造改革を踏まえた見直しに取り組むものとする。
各法人の長は、これらの取組を含む中期計画をできる限り早期に策定し、主務大臣は、中期計画における削減目標の設定状況や事後評価等を通じた削減の進捗状況等を的確に把握するものとする。
(注)今後の人事院勧告を踏まえた給与改定分を除く。

と,独立行政法人と国立大学法人が全く同じに書かれている.法律には素人の私には,なぜこれで問題が無いのか理解出来ない.しかし,大学の「経営者」は,これを素直に読めるらしい.

さて,我が大学でも,組合と大学が来年度の大幅給与削減について団交をしている.人勧および公務員給与法に倣った大幅削減提案の根拠として大学が示したのは,運営費交付金等通常予算の枠組みでは減価償却予定額にすらも桁違いの不足があるということだけであった.公務員準拠の給与削減をしたところで大学財政の破綻状況については誤差であり,今回の給与削減率の根拠は大学の財務状況からは説明がつかない.そのことは大学も認めた.

長年大学法人を「経営」して来てそういう状況に陥った,というのであればまだ理解できるが,一昨年に法人化したばかりであるにもかかわらず制度的に「経営」が成り立たないということを示して,公務員に準じた給与削減に応じろというのでは納得出来まい.我々が望んで非公務員の「法人」にしてもらった訳では無いし,そもそも国家公務員の定員管理から外れることで定員削減を回避することが有馬文部大臣(当時)をはじめとする法人化推進論者の説明の最大の根拠だったはずである.制度設計の不備は,法人職員ではなく,まずは制度を作った側が負うべきだろう.

結局は,自ら裁量が無いと公言する「経営者」を窓口にして国と争っているだけという,法人化時に我々が最も危惧し嫌がったパターンに陥っている.
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by nobu_san | 2006-03-09 23:12 | 大学問題
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